イタリアで、彫刻やステンドグラスが美しく飾られた教会が、今では住居として生まれ変わり、より身近な存在になっています。高い天井に開放感のある間取り、不動産業者お墨付きの住宅。イタリアでは2010年、以前教会として使われていた建物の売買が、50%以上も増えている。現在、10万軒にのぼる教会が、ほとんど使われていない状態となっている。しかし、歴史的な古い建物を維持するためにはコストがかかることから、お金の工面のために売りに出され、住宅などにリノベーションされることが多くなっている。ガルバニ神父は「小さな町では、神聖な建築物が住居に変わったとしたら、それは素晴らしいことです。わたしたちの信仰心がなくなるわけではありません」と話した。金融危機以来、こうした建物は、待ち望んだ資源へと変ぼうし、不動産業界にとっても成長ビジネスとなっている。大手不動産業者は「教会を売り出すトレンドは、これから数年間続くと思います。教会側も民間のオーナーも、使われてこそ価値があるとして、無人化することを食い止めようとしています」と話した。値段は、5万ユーロ(日本円で600万円)以下の手ごろな物件から、中には数億円相当の豪邸まで、いろいろ。これまでは、購入者は主に外国人だった。しかし現在では、イタリア人の投資家が増えてきている。不動産業者は「外国人だけでなく、イタリア人も興味を持ち始めているわ。自分たちの歴史や遺跡を誇りに思っている証拠よ」と話した。居住空間としてだけでなく、ナイトクラブのような商業目的に使われることもあるほどで、バーカウンターやきらびやかなライトからは、以前の神聖な教会の面影は見られない。いまだに、リセッション(景気後退)の影響がぬぐえないイタリア不動産市場。こうした宗教的建物からの生まれ変わりは、天からの贈り物かもしれない。