TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)に対し、JA全中などがゼロ関税で格安1次産品の洪水となれば、日本の農業などは壊滅すると悲壮な反発をしています。一方で、質の高い日本のコメを世界に認めさせようというコメ農家もいます。国際社会で問われる日本農業の戦闘力を検証しました。山形県の庄内平野は、自然豊かな食材の宝庫として知られる。一軒のコメ農家を訪問すると、収獲したばかりのコメを精米している真っ最中だった。2010年の出来は、上々だという。このコメは海を渡り、遠く地球の裏側まで運ばれる「旅するコメ」だという。いったいどういうことなのか、精米所に現れた1人の男性が、旅するコメを生み出した張本人だった。佐藤彰一さん(56)は、庄内平野で作ったコメを、EU(ヨーロッパ連合)やオーストラリアなどに輸出し、日本産の高級米として販売している。外国への出荷量は2年で3倍、2010年はおよそ120トンになる見通し。佐藤さんは「すぐにやっぱり、目線の先は消費者です」と語った。袋詰めの終わった新米の袋、「日本産/PRODUCT OF JAPAN」の文字が誇らしげだった。旅するコメ、それは海外に打って出る戦うコメで、佐藤さんは自ら販路を開拓し、外国市場で戦ってきた。佐藤さんは「食べて『おいしい』というふうに感じちゃうのは、それはもう、日本のお米が世界の中でも、やっぱりもうNo.1だという。これから先の、やっぱり日本農業がどうやったらね、生かすことができるとか、そういった道を探っていくのは、やっぱり農業者自らじゃないと、これはね、僕はできないというふうに思います」と語った。政府が参加を検討しているTPPに対し、強い懸念を示す農業界などからは、28日も厳しい声が上がった。JA全中の茂木 守会長は、「参加国は米国や豪州など、世界最大の農産物輸出国であります。例外を認めないTPPを締結すれば、日本農業は壊滅します」と語った。JF全漁連の吉田博身代表理事専務は、「これ以上の輸入自由化は、漁業はもちろんのこと、関連する加工業、流通業、さらには漁村や地域社会の崩壊を招くおそれがある」と話した。太平洋を囲む9カ国が交渉を続けるTPP、その原則は関税のゼロで、ほぼすべての関税を廃止することを目指している。アメリカやオーストラリアでは、すでに日本米の生産が行われている。関税が撤廃され、安いコメが入ってくれば、国内のコメ農家も無傷では済まされない。今、日本農業の国際競争力が問...