沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件に関するビデオ映像の流出問題で、海上保安庁は８日、被疑者不詳のまま国家公務員法の守秘義務違反や不正アクセス禁止法違反などの容疑で東京地検と警視庁に刑事告発した。警視庁は同日、告発を受理し、刑事部捜査１課を中心に捜査を始めた。今後、検察当局とも協議する。　また、インターネットに投稿された６本の映像のうち、２本の末尾に挿入されていた「企画・制作」の文言は、石垣海上保安部（沖縄県石垣市）が内部研修用の素材として編集する際につけていたことが、海保の調査で分かった。　文言は「企画・制作　ＰＬ６３　巡視船よなくに」と記したもの。流出した映像のうち、２本目と４本目の末尾に加えられていた。海保は、取り締まりなどの映像を研修用に編集して残すことがあり、今回の６本の流出映像は、いずれも研修用に編集した映像だった可能性がある。ただ、海保の鈴木久泰長官は８日の会見で、「地検の求めに応じて必要な部分にテロップを入れ、編集した」としている。　このうち、文言が挿入された２本は、最初に中国漁船に衝突された巡視船「よなくに」から撮影されたものだが、初めから撮影していた乗組員が持っていたカメラの記録媒体の容量がいっぱいになったため、別の乗組員のカメラに引き継ぎ、２本に分けられたという。文言は映像を編集する過程で、この映像の切れ目に挿入されたとみられる。　映像は編集後、那覇地検に捜査資料として提出されたことは判明しているが、流出の経緯はわかっていない。海保は任意の調査では特定に限界があると判断し、真相究明を刑事捜査に委ねることにした。　警視庁は、該当する罪種が不明なことから、ハイテク関係の部署を持ち、体制も大きい捜査１課で捜査にあたることにした。