オートレース界に、44年ぶりに女性選手が誕生しようとしています。ブレーキのないバイクを操り、時速150kmで疾走。そこは、汗とオイルのにおいが立ち込める勝負の世界。これまで男社会だったオートレース界に今、44年ぶりに女子選手が割って入ろうとしている。佐藤摩弥さん(18)は2010年、およそ50倍の狭き門をくぐり、オートレース候補生の2次試験に合格した。摩弥さんは「びっくりとうれしいと、ものすごくテンション上がっちゃって、友達とワイワイはしゃいでたんですけど」と話した。摩弥さんの部屋にずらりと並ぶトロフィーは、全部バイクレースのもの。小学生のころからモトクロスを始めた摩弥さんの実力は、全国でもトップ10に入るほど。10年以上またいできたバイクには、人一倍、素養も思い入れもあった。そんな摩弥さんがオートレースと出会ったのは中学の時で、父に連れられて行った川口オートだった。摩弥さんは「モトクロスをずっとやってきたのもあって、バイクに関係する仕事に就きたいなと思ってたので、そのころに、こういう道もあるんだって」と話した。摩弥さんは、候補生試験に合格し、夢への扉を開いた。しかし、それは同時に、楽しんできた高校生活との別れを意味していた。2010年9月からは、養成所での厳しい合宿生活が待っている。候補生は、外出も携帯電話の持ち込みも禁止で、起床から消灯まで、実技もバイクの整備も徹底的に鍛え上げられる。そこは、外部とは隔離された特別な世界。しかし、摩弥さんは、その世界に飛び込む決断をし、高校は中退した。2年半通った学校に別れを告げ、自分の選んだ道へ。親友の余田 史緒梨さんは「自分のやりたいことだから、応援したい」、「でも、一緒に卒業したかったです」と話した。友人たちは、退学する摩弥さんに1冊の本を送った。それは、手作りで思い出の高校生活をまとめあげた、世界で1つだけの「卒業アルバム」。摩弥さんは「自慢の友達になって、帰ってこられるように」と話した。9月の入所を前に、摩弥さんは、初めて実際のバイクに接した。女性の小柄な体に合わせ、入念にフレームの調整が行われる。摩弥さんは「女性だからって言われるのは、しょうがないと思うんですけど。やっぱり、そう言われないように。負けない気持ちが一番大事かなって。強気でいきたいですね」と話した。9カ月間の訓練を終了すれば、2011年6月、晴れてデビューとなる。44年ぶりの女子選手へ...